猫 の 帰 る 城
それでも、別れ際に真優が見せた笑顔が、僕を悪い意味で安心させてしまったのだ。
僕はあの笑みを深く追及しようとしなかった。
ちょっとした嫉妬心をごまかすための笑顔だと僕はひとり勝手に解釈した。
いつもは何でもないことに敏感になってしまうことだってあるのだから。
真優はきっとやきもちをやいたのだと、僕は考えることにしたのだ。
そう考えたのが、もしかしたら大きな間違いだったのかもしれない。
そこに疑問を抱いていれば、今日はまるで違う一日になっていただろう。
いや、たとえあの笑顔の意味を知っていたとしても、僕はおそらく、真優のところに行くことはなかった。
僕はぼんやりとお昼のワイドショーを眺めていた。