猫 の 帰 る 城





めちゃくちゃはめちゃくちゃを呼び込む。


アクシデントなんて予想のつかないもの。
何気ない日常の中で衝突するものだ。

同じこと繰り返す毎日を、無表情でやり過ごそうとする日にやってくる。

そんなものだ。






 *


それはいつもの土曜日、僕は書店員として勤労に励んでいた。

午前の職務を終え、休憩をとりにスタッフルームへ向かっていた。
午後を乗り切れば真優と一緒にあがって、夕食を食べる約束をしている。

文庫本がずらりと並ぶ本棚を曲がると、従業員専用と書かれた扉が見える。
それまではいつもと同じ。

けれど今日は扉と同時に、背の高い女性が視界入ったのだ。
すらりとしたスタイルのいい体に栗色のベリーショート。


僕は息をのんだ。

いるはずのない人物がそこにいたからだ。




「小夜子」







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