猫 の 帰 る 城
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小夜子がいなくなっても、季節は過ぎていく。
それは苦痛なほどゆっくりと、長く、時間をかけて。
いっそあっという間に時が経てば、この悲しみから早く抜け出せるだろう。
彼女のいない日々は、あの夏のようにはいかなかった。
楽しいことは一瞬で終わってしまう。
僕はそれを痛感することになった。
あとに残ったのは、抜け出せない、義務のようにこなす毎日だ。
それでも確実に、時間は過ぎていった。
何をしなくとも、季節は移ろう。
青々とした緑が消え、キャンパスに枯葉が散ったと思えば、今度は肌を突き刺すように冷やかな風が吹き始める。
秋が過ぎ、冬が来る。
色のある世界を生きようと、色のない世界を生きようと、それは変わらないことだった。
そうして
気づけば、小夜子のいない十二月を迎えていた。
街路樹には色とりどりのイルミネーションが施され、ショップのウインドウには赤と緑が目立ち始める。
街の広場に大きなツリーが登場すれば、人々は愛する人と手を繋ぎ、それを眺めた。
クリスマスが迫っていた。
幸せな街に恋人たちが溢れる日。
彼女と会ったのは、それを控えたある日のことだ。
こころの中の小夜子に支配され、動けずにいた僕の前に、突然その人は現れた。