月下の幻影
「……女性を蔑視したつもりじゃなかったんだけど、そう聞こえたならすまない」
和成が呆けたように謝罪すると、塔矢が口の端で少し笑いながら和成に視線を送り、彼女の頭にげんこつを落とした。
「差し出口きく前にご挨拶申し上げろ」
彼女は頭を押さえて塔矢を少し見た後、和成に向き直り頭を下げた。
「山﨑月海(やまざきつきみ)と申します。この度、君主様の護衛官を仰せつかりました。以後、よろしくお願いいたします」
「よろしく」
和成は笑顔で答えた後、月海に尋ねた。
「こんな事訊いたらまた気分を害するのかもしれないけど、どうして軍人になったの? 体力的にも精神的にも女性には厳しい職務だと思うけど?」