月下の幻影
和成の承諾を聞いて、月海は一礼すると執務室を出て行った。
月海を見送った後、塔矢がクスクスと笑い始めた。
そして、和成を横目で見つめて言う。
「鏡を見ているようだろう」
和成も目を細くして横目で塔矢を見る。
「……確かに、おもしろい奴ですね」
「確かめなくても、あいつの腕はかなりなものだぞ」
「彼女の腕を疑ってはいません。塔矢殿の人選ですし」
壁に掛けられていた刀を取って腰に差す和成を見ながら、塔矢はおもしろそうに笑った。
「何を考えている?」
和成は振り返ると、逆に問い返した。