月下の幻影
「おまえ、全然わかってないな。今の勝負、傍目にはいい勝負に見えたけど、殿は力半分も出していなかったぞ」
「え?」
月海は少し里志を見つめた後、和成に尋ねた。
「本当ですか?」
「半分ってのは大袈裟だけど、全力でなかったのは認めるよ」
和成が苦笑すると、月海は拳を握って和成を睨みつけた。
握りしめた両の拳が小刻みに震える。
「バカにしないで下さい! 私は全力で挑みました! 女なんかまともに相手にできないってことですか?!」
「月海! 口を慎め!」
怒鳴りながら和成に詰め寄る月海を、里志が押しとどめる。
今にも掴みかかってきそうな月海を見据えて、和成は静かに問いかけた。
「君は私と勝負することが目的だったの?」