月下の幻影


「……同情などいりません。相手の力量を見極めることもできない未熟な私など……」


 目を伏せて不愉快そうに呟く月海を、和成は眉を寄せてうんざりしたように見つめると、軽くため息をついた。


「弱い奴に同情したって意味がない。同情して弱い奴に護衛を任せたんじゃ、私の身を守ってはもらえないだろう?」


 月海は益々項垂れると力なく謝罪した。


「申し訳ありません……」

「そんなに気落ちする必要ないよ。今ここにいる中で私に勝てるのって、塔矢殿と里志殿だけだもの。君が二人に勝てるのなら落ち込んでもいいけどね」


 月海が驚いて顔を上げると和成はおもしろそうに笑っていた。

 最初から自分が勝てる相手ではなかったのだ。
 それがわかった途端、張り詰めていた気が一気に弛んだ。
 同時にからかわれたような気がしてちょっと不愉快になった。

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