月下の幻影
「……結構強い程度の水準ではないじゃないですか。なのに、私ごときに真剣勝負だなんてお人が悪うございます」
ふてくされて口をとがらせる月海に、和成は笑って右手を差し出した。
「君があんまり自信満々だったから、私もヤバイかなと思って。これからは護衛よろしく」
「……よろしくお願いいたします」
月海は気まずそうに上目遣いで和成を見つめると、差し出された右手を握り返した。
「じゃ」
そう言って和成は、通りすがりに月海の肩を軽く叩くと道場の出口へ向かった。
月海は慌てて振り返ると、身体を直角に折り曲げて和成に深く頭を下げた。