月下の幻影
「君主様! ご無礼の数々、誠に申し訳ありませんでした!」
和成は振り向いて微笑むと、軽く手を挙げてそのまま道場を出て行った。
その後を追うように、塔矢も道場を後にする。
月海はしばらくの間、道場の出入り口を見つめて、ぼんやりと立ち尽くした。
和成に肩を叩かれた時、肩にのしかかっていた何かが全て取り除かれたような気がした。
そして、これまで感じたことのない不思議な心の高揚感を覚えた。
胸を押さえて、その心地よさに目を細めると自然に口元が緩んだ。