月下の幻影
慎平は少し目を見開いた。
「紗也様……」
そして、懐かしそうに遠い目をして微笑んだ。
「懐かしい名前ですね」
和成は少し不思議そうな表情を浮かべた後、すぐに納得して小刻みに頷いた。
「あ、そうか。もう十二年経つんだったな。俺は毎日考えてるからそんなに経ってるとは気付かなかった。確かに懐かしいかもな」
「毎日ですか?」
当然のようにサラリと言う和成に慎平は驚いて問い返した。
「悪いかよ」