月下の幻影


 その夜月海は、布団の中でゴロゴロといつまでも眠れずにいた。
 枕が変わったこともあるが、今自分のいる部屋に昨日まで和成がいたかと思うと、なんだかドキドキして目が冴えてしまったのだ。

 和成が自分よりも自分の親に年齢が近いのにも驚いた。

 頭の中で自分の父親と和成を並べて比べてみる。
 そして、クスリと笑った。


「全然お父さんには見えない。だって、和成様は頭がよくて、強くて、男前で、お父さんより断然かっこいいもの」


 気がつけば和成のことばかり考えていた。

 自分の名を呼ぶ和成の声を思い浮かべる。
 和成に呼ばれると自分の名前が甘い響きを奏でるような気がした。

 頭の中で和成の声を繰り返し再生するたびに、心が弾み自然に顔がにやけてきた。

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