月下の幻影


 頭の中で響く声に応えるようにその名を呼ぶ。


『月海』

「和成様……へへっ」


 益々顔がにやける。


『月海』

「うふふ……和成様」


 名前を呼ぶたび、気持ちが舞い上がりそうになる。


『月海』

「か・ず・な・り・さ・ま……きゃああ」


 照れくさいのか、嬉しいのか、楽しいのか、よくわからない。
 それらがごちゃ混ぜになった不思議な感情が極限に達して、月海はじっとしていられなくなり、布団を抱きしめて寝台の上を転げ回った。

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