月下の幻影
気がつけば和成のことを考えている。
姿を見れば目で追っている。
言葉を交わせば一日中うきうきするし、姿さえ見ない日は心に穴が開いたような気分になる。
自覚した途端、楽しいばかりではなくなった。
想っても仕方のない相手なのだ。
和成は君主で、父娘ほども年が離れていて、おまけに聞くところによると、亡くなった妻である先代君主を今でも深く愛しているという。
池を見つめて大きくため息をついたところに、声をかけられた。
「どうした。里心が付いたのか?」
驚いて声のした方を向くと塔矢が立っていた。
「そんなんじゃありません」
月海は不愉快そうに塔矢から顔を背ける。
塔矢は笑いながら月海の隣に腰を下ろした。