月下の幻影
7.未来永劫
その夜、月海はいつもより早く自室の外に出た。
昼間の和成の不思議は謎が解けた。
後は夜の和成の不思議だけである。
どうしても何を言っているのか知りたくなった。
月海は目立たない暗い色の着物を着て、中庭に降りた。
いつも和成が現れる場所は大体一緒だ。
月海はその場所から、遠すぎず近すぎず正面でない場所に生えた木の上に上った。
そこからは君主居室の庭がよく見える。
庭に植えられた大きな桜の木が、すでに満開となっていた。
月海は太い枝に座り、幹に腕を回して掴まった。
少しして庭の奥に和成の姿が見えた。
和成は途中桜の木の前で立ち止まり、少し眺めた後、まっすぐこちらへ向かってきた。
月海は気配を殺して身を固くする。
和成が一歩一歩と近付いてくるごとに鼓動が早くなり、思わず着物の胸元を掴んだ。
和成がいつもの場所に到着した。
斜め横から見る和成の顔がはっきりと見える。
ここからなら口の動きもはっきりとわかりそうだ。