月下の幻影


 ゆうべ見た満開の桜の事だ。


「あぁ、あの桜」

『あれ? よく知ってるね』


 ヤバイ!
 夜中に覗き見していた事がバレる、と思い月海は適当に出任せを言う。


「先日、ご挨拶に伺った時、庭に大きな桜があるのを拝見しておりました」

『あぁ、やっぱ、女の子は花が好きなんだね』


 どうやらごまかせたらしい。
 月海が内心安堵のため息をついていると、和成が全く違う事を尋ねた。


『ところで月海はいける口?』

「……お酒ですか? たしなむ程度には」

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