月下の幻影
月海は和成を見つめて息を飲んだ。
そして、視線を落として一気に告げた。
「私は和成様をお慕い申しております。どうか、一夜の情けを賜りたく存じます」
和成は一瞬目を見開いた後、すぐに静かに微笑んだ。
「夜伽の話は冗談だよ」
「存じております。だから私のわがままにございます」
和成はひとつ嘆息すると静かに言う。
「君に恥をかかせるつもりはないんだけど、そのわがままは聞けない。男としてはもったいない事なんだろうけどね。こんなに若くて素敵な女の子の申し出を断るなんて。だけど君の想いに応えられないのに、一夜の情けをかけられるほど私は器用じゃないんだ」
和成に断られ、月海は急に自分の言った事が恥ずかしくなり、顔を真っ赤にして頭を下げた。