月下の幻影


 和成は少し笑って首を傾げる。


「それで妥協してもらえないかな。君に何度も恥をかかせるわけにはいかないしね」


 和成を見つめていた月海の目から涙があふれて頬を伝う。
 月海は顔をゆがめると和成に縋り付いた。

 届かぬ想いが言葉となって唇からあふれ出す。


「好きです、好きです、好きです、好きです」
「うん。ありがとう。だけど、ごめん」


 和成は月海の肩を抱いて、子供をあやすように頭をなでた。

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