月下の幻影
「私は見てみたい気もしますが、そういう意味ではありません。月海を外交官に任命したいと思います。断られてもめげない根性が気に入りました。交渉も上手ですしね。一番の理由は彼女が女性である事です」
すっかり平常心を取り戻した塔矢がピンと来た。
「対浜崎外交戦略か」
「そうです。軍師のみならず外交官も女性だなんて、私に対する嫌がらせとしか思えません」
憮然として腕を組む和成を塔矢は呆れたように見つめる。
「あれは嫌がらせというより、美少年を美女で腑抜けにしようという作戦だろう。あからさまに扇情的な格好をしてたじゃないか」
「そうでしたっけ? 確かに薄着だったと思いますけど、夏場だったから単に暑いのかと思ってました。まぁ、そういう作戦だったとしても、月海には通用しませんし、私と外交で国外に出る時は護衛も兼任ですから人件費も一人分浮きますよ」
にっこり笑う和成に塔矢も笑い返した。
「そうだな。大臣たちに進言してみよう」