蒼天に明月

目を開けると、そこは白い世界が広がっていた。


薬品の匂いなのか、換気をしていないのか、こもった独特なにおいが嗅覚を刺激した。


ああ、そうだ、病院の匂いだ。


腕には管がつながれてあって、透明な液体がゆっくりと私の体内に入ってきていた。


頬にガーゼがあり、口の中はほんのり鉄の味がした。


なんとなく、オデコを触ると布で覆われていた。


「……………」


手のひらを見ると、少し震えていた。


その震えが何からくるものなのか、分からないが、ひどく心臓を打つ脈が、速かった。


「……………」


どうして、私は生きているのだろう。


男に首を絞められ、死んだものかと思ったのだが、私は生かされている。


男は私をどうするつもりなのだろう。


逆らえば殺す、飽きても殺す。


口を開けば殺すとしか言っていなかった気がするが、あの男はいったい何だろう。


従わない私を生かしてどうするつもりなのだろう。


ガラリと、ドアを開けて入ってきたのはあの男だった。


ヒョウ柄のパンツとピンクの靴を履いた、奇妙な男。


目は鋭いままで、私はその目に引き込まれた。


ああ、分かった。


この男は私を。


「生き地獄に突き落とすんだ」
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