蒼天に明月
「…そこらへんの馬鹿女じゃないらしいな」
くい、と私の顎をつかんだ。
ドクドクと心臓と脳が警鐘を鳴らす。
と、不意に男が口角を上げた。
男の手にはハンマー。
殴られるのかと、身を構えたが、男は私の脛にそれを打ち付けた。
「あ゛ぁっ」
激痛が走り、吐き気がして口に手を当てる。
「うぁぁぁぁぁ゛」
ゲロゲロとベッドの外に吐瀉物を落とし、ベッドの柵のようなものに掴まっているその間にも、何度も何度も、男はハンマーで私の足を打ち砕いた。
足を動かすことも、悲鳴を上げることも、ただ脂汗を額に浮かべることしかできない私は、なんと滑稽だろうか。
真っ白で綺麗だった布団は、私の血を啜り、真っ赤に色を変えていた。
男は笑いながら私の足を壊していく。
それが恐ろしくて、目から涙がこぼれた。
なんということだ。
私の理解の範疇を超えている。
いったい何がおかしいというのだ。
「……………………」
不意に男が行動をやめ、私を見た。
恐怖で体が縮む。
体温が下がる。
男はこれから何をするつもりなのだろう。
さっきまで握っていたハンマーは地面に投げ捨て、私の首を絞めた。