その恋、取扱い注意!
湊の容姿の遺伝子は、ほとんど母親譲りなのかもしれない。

「今帰り? お帰りなさい」

「えっ? あ、た、ただいま……お仕事ですか?」

「ええ。今日はちょっと重役出勤なの」

ふふふっと笑う湊のお母さんは大手化粧品メーカーの部長さん。
よく試供品などをいただき、おかげさまで私の化粧品に掛けるお金はほとんどない。

「じゃあね」

なぜか、湊のお母さんの意味ありげな笑みが気になる。

去っていく姿を見送り、玄関のドアをそっと開けた。

外泊理由は電車の中で考えた。
湊のところに泊まったなんて言えないから、飲んでいて終電を逃したから、同じ部署の久我さんのところに泊めてもらったというつもり。

嘘を吐くのが苦手で、すぐに顔に出てしまうからバレやしないかヒヤヒヤものだ。

「ただいま……」

お母さんはリビングルームで掃除機をかけていた。
私の姿を見て、掃除機のスイッチを切ったけれど、怒っている顔ではない。

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