その恋、取扱い注意!
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湊は街路樹の植え込みの近くで待っていた。

「み……」

湊は電話中らしくスマホを耳に当てていた。
その姿は一枚の写真のようで、行き交う人が見ていく。
湊はスーツ姿だった。
しかもシックで細身の3ピース。

初めて目にする装いだ。
これも両親に挨拶するからに違いない。
そこに湊の強い思いを感じる。

スマホで話ながら、視線が少し離れた私の方へ動く。
視線が合い、湊は軽く手を上げた。
私も手を上げて駆け寄った。

「ごめんね。いつも待たせてばかりで」

「いや、それほど待ってないよ」

湊はスマホをポケットにしまう。

「それより、見惚れてただろう?」

「えっ?」

「今にもよだれを垂らしそうな勢いで見てたぞ」

「だ、誰がそんなっ! 七五三みたいだな~って見てただけっ」

「こいつ、25の男に向かって言うか? 俺の魅力がまだ分からないんだな」

「今日って、そんなにびしっと決めなきゃだめなもの?」

「けじめってやつだよ。よく知っている分、ちゃんと認められてもらいたいからな」

そんなものなのかな。


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