その恋、取扱い注意!
店内を掃除し、乱れたパンフレットを整頓していると、課長がやって来た。

「安西君、お盆のパリの座席取れたよ」

「取れたんですかー。それは良かったです。課長のプッシュのおかげですね」

整頓の手を休め、課長に返事を返す。

パリ旅行のお客様。ホテルは取れているけれど、航空座席がまだだった。毎日のように取れたか確認の電話がかかって来て少々厄介なお客様だった。だからといって、強く航空会社にプッシュするわけではない。すべてのお客様の座席が取れるように、努力するのが当たり前なのだから。

早く夏休み、来ないかな~ もうすぐ予約しなきゃ。でも、どこに行こう。

9月にもらえる1週間の夏休みに、パンフレットを整頓しながら思いを馳せる。

フィジー? ニューカレドニア? タヒチは高くて手が出せないな。

そこではたと気づく。

結婚費用ってどれだけかかるの?
私の貯金なんて微々たるもので……今度の旅行もボーナスでと思っているのに。

私達、当分結婚できないんじゃ……。

「安西さん、ちょっと来て」

「あ、はいっ」

課長に呼ばれ我に返ると、手にしていたパンフレットを元に戻した。

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