その恋、取扱い注意!
「行くぞ」

「うん」

バッグを持って、湊の後を追った。

外に出ると夏の風が、火照った身体に気持ちいい。
少しじめっとした風だけど、夏の夜の始まり。

「夏休みになるとよく花火したね」

BMWのロックを解除した湊は、私を見る。

「ああ。この季節になると思い出す。お前がねずみ花火に追いかけられて、泣きべそかいたこと」

「湊っ!」

からかわれて、いつもの雰囲気が戻る。

「湊が面白がって、何個もいっぺんに火を点けたからでしょっ」

湊が声に出して笑う。

「今年は久しぶりにやろうか。またミミが泣きべそかくところが見たい」

「ぜーったいに、嫌ですっ」

ぷいっとそっぽを向くと、助手席に乗り込んだ。
湊は笑いながら運転席に座った。

「ね、窓開けていい?」

「ん? かまわないけど、髪が乱れるよ?」

私が開けるまでもなく、湊が開けてくれた。


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