その恋、取扱い注意!
駅ビルの中に入り、好きな服ブランドのショップにも脇目を振らず、アロマオイルのコーナーに足を運ぶ。ショップの少し手前から、ラベンダーなどの癒される香りが漂ってきた。

お目当てのショップを見つけて、中へ入る。

あった!

私が手にしたのは「イランイラン」エキゾチックな甘い香りで、ストレスやムード作りに良いと書かれている。

ムード作り……んー。

湊の顔がぽわんと脳裏に浮かぶ。顔だけじゃなくて、ハダカで抱きしめられている。

わわわっ!

妄想を振り払うように、首を何度も横に振っていると――。

「ミミちゃんじゃない?」

だみ声……じゃなくて、ハスキーな聞き慣れた声が背後でした。

振り返ると、赤い格子柄のカッターシャツとジーンズ姿、短髪の男性が立っていた。

え……?
声は美里ママで……目の前の人は普通の男性。

「もしかしてわからないのかしらぁ?」

私に顔を近づけると、右手を頬に持ってきて、くねっと笑う。

< 252 / 437 >

この作品をシェア

pagetop