その恋、取扱い注意!
「誘われたの?」

「普通に冗談めいて誘うのなら、まだ笑って済ませられたんだけどな? 女装コンテストに優勝した時の写真をネタに、ゆすってきたんだ。ここでバイトしないと、会社にばらすぞと。最初、なにを言っているのかと、俺は腹を立てて、敬一を殴ったんだ。敬一は「殴られて、もっともだよな」って言って、理由も言わずに帰った。そんなある日、敬一の実家が経営している洋食店が、多額の負債を負ったことを知ったんだ」

そこで車の前を通った老人が、こちらを見ていることに気づいた湊は、言葉を切った。

車の中で女がふたりなにをしているのだろうと、思っているのだろうか。
立ち止まっていた老人は、私たちと目が合うと、そそくさと立ち去った。

「流すか……」

湊はサイドブレーキを解除し、アクセルを踏み、車を発進させた。

「どこまで話したっけ?」

「えっと、美里ママ?の実家の洋食店が負債を負ったって……」


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