その恋、取扱い注意!
「ミミ!」

パッと歩く人の背に隠れるべきだったのに、もたもたしていたせいで見つかってしまった。

「お、お帰りなさい……」

気まずくて、私らしくなく口ごもってしまった。

湊は行き交う人を避けながら、私に近づいた。

「ただいま。ミミ。迎えに来てくれたんだ」

「あ、うん……でも、仕事仲間が……」

「あー これから新宿で食事するけど、支社の同期だから問題ないよ。ミミも一緒に来ればいい」

「えっ? ううん! いいよ。いい。帰るからっ」

やっぱり前もってメールをしておけば良かった。

恥ずかしさと気まずさで、冷房の効いた空港内だけど、顔が赤くなっているに違いない。

「じゃ、じゃあね」

「おい! 待てよ!」

脱兎のごとく、ここから離れようと歩き出そうとすると、手首をがっしりと掴まれる。

湊の名が、外国のイントネーションで呼ばれる。

『ミナト?』

『すまない。婚約者が迎えに来てくれていたんだ』

湊は振り返り流暢な英語で、長いブルネットの髪が美しい女性に答えた。

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