その恋、取扱い注意!
「ふ、ふたりだけになんてなってないじゃない」

戸惑う雰囲気に少し腰を上げて、身体をずらす。

「そうやって逃げるんだ。まあいいよ。今夜は寝かさないからな」

「ね、寝かさないって……」

冷房の効いたロビーなのに、身体が火照るようで、顔も赤くなっているはず。

「そんな顔するなよ。夕食の約束、破りたくなる」

「夕食……やっぱり私はいいよ。湊の部屋に先に行ってるから」

「どうして? 一緒にいたいんだ。それにここまで来て帰ることないだろ」

私を説得している湊はふと顔を別の方向へ向けた。

『ハイ! ミナト!』

仕事帰りのようなグレーのビジネススーツ姿の女性が、そばに立っていた。

『エリー』

湊は立ち上がると、ブラウンの髪を結った女性に抱きつかれる。
一瞬、驚いたけれどこれは外国なら当たり前のこと。そう気を取り直し、私も立ち上がる。

『もしかして、ミナトのガールフレンド?』

すぐに湊から身体を離した彼女は、にっこり私に笑いかける。

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