その恋、取扱い注意!
******

「結局おかわりしなかったな」

早めの昼食が終わって、江の島に向けて車を走らせる湊が言った。

「うん。お刺身の他にも茶碗蒸しや、煮物にサラダまであったから」

「まあな。男の俺でも量がハンパなかった」

「ね? さっき、なにか言いかけなかった?」

「ん? ああ。昨日、どこに行ってたんだよ。あんな時間に帰ったら危ないだろ」

「昨日ね、面白いところに行ったの」

美人堂を思い出し、自然と顔がにやける。

「面白いとこ?」

「うん。湊はニューハーフのお店に行ったことがある?」

「無くはないよ」

「ニューハーフさんって、楽しいよね~ あの毒舌感が面白いの。それに女の人でも敵わないくらいの美人のニューハーフさんもいて」

「ふうん」

湊は私の話をちゃんと聞いているのか……適当に返事をしているみたい。

「湊、聞いてるっ?」

「聞いてるよ」

あ! 美人のニューハーフさん、湊に似ているんだ! 
そう思っても、口に出して言えないわ。
言ったら、絶対不機嫌になる。
俺をニューハーフと一緒にするなって怒りそう。


< 30 / 437 >

この作品をシェア

pagetop