その恋、取扱い注意!
「おはようございます」

頭を下げて挨拶すると、彼女は挨拶を返さず睨みつけてきた。

「松下さん、誰かさんのせいで、今日休みよ。あなたはよく出てこられたわね?」

「……」

「意外としたたかな子で、驚いたわ」

したたかって……どんな話を松下さんはしたのだろうか?

「すみません。遅れてしまいますので、失礼します」

頭を下げると、いらだつ表情の彼女を残し、逃げるように更衣室を出た。



話題にしたがるのは女性社員ばかり。男性社員が取り合わないことに、少し安堵だ。

お昼になり、早く話を聞きたくてうずうずと言った久我さんと菊池さんが、私をさらうようにして、昼食に連れ出した。

会社から少し離れたカフェに入る。ここならば、会社の人に聞かれることはないだろうと、久我さんがチョイスした店。

「で、安西さん。松下さんは単なる言いがかりなの?」

ズバッと聞いてくるところは久我さんらしい。

「松下さんの好きな人は、私の家の隣に住む幼なじみで――」

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