その恋、取扱い注意!
その日は何度もキャンセルの件を、コンピュータで確認したかわからない。お盆の時期で、やっと取れたのだから、容易に取れないだろう。そう考えると、悔しいし、気持ちが落ち込む。



なんとか仕事を終わらせ、自宅に戻ると、ベッドの上に身を投げ出す。

「はぁ……」

ため息しか出てこない。
ごろっと仰向けになって、目を閉じる。

「いったい誰がやったの……?」

昨日のキャンセル……印鑑が持ち出されてしまったのかと考えて、引き出しを見るとちゃんとあった。と言うことは、誰かがあの席で印鑑を押したんだよね。
でも、簡単に持ち出すことも可能だ。出勤時間前や退社後、それにお昼休みだって、人の目を盗んで押すことはできる。

ずっと誰がやったのか……ばかり考えていた。

「美海~」

階下で私の名前を叫ぶ母の声。

「用があるなら、くればいいのに……」

今日の私は機嫌よく部屋から出る気分じゃない。
大事な用があれば、部屋にやってくるはず。


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