その恋、取扱い注意!
顧客の会社に出向き、応接室で激怒されてしまったけれど、何度も頭を下げるうちに、気持ちを和らげてくれた。

「君は若くて女の子なのに、勇気があるな」

40歳代くらいの男性は中小企業の部長さん。

「がんばります。不安にさせてしまい、本当に申し訳ありません」

「私も日程を、変更できるか確認をしてみるよ」

「佐古田様……」

「切実な君の心に打たれたよ。昨日、何とか変更を出来ないか聞かれたが、頭に血が上り出来ないと答えたんだ。でも、今の君を見ていたら、自分が大人げない気がしてきたよ。精一杯、がんばってくれ。結果がどうであれ、もう私は嫌な気持ちになったりしないから」

優しい言葉をかけられ、胸と目頭が熱くなり涙の粒が零れ落ちる。

「あああっ、泣かないでくれ」

私の涙を見て、オロオロと慌てている。
この部屋に入った時の印象とはすっかり変わり、温厚な人になっている。


< 323 / 437 >

この作品をシェア

pagetop