その恋、取扱い注意!
会議室に入るとほぼ同時に、田代部長が姿を現した。

「安西君、ご苦労だったね。話しはすぐに済むが、まあかけてくれ」

田代部長のねぎらいの言葉に、小首をかしげながらも、パイプ椅子に腰を下ろす。

「佐古田様から電話をもらったよ。君のような部下を持ってうらやましいと。あんなに激怒していた人の気持ちをよく和らげたね」

「……どんなに叱られても、謝るしかないと思ったんです」

「自分のせいではないのに、よくやったな」

「えっ?」

部長は私のせいじゃないって、今言った?

「君が受けたキャンセルカードと、今回のカードの文字を照らし合わせてみた。全く違う文字だったよ。それと、キャンセルをした時間、君は久我君たちとランチに出ていた」

「部長……信じてくださるんですか?」

「もちろん。自分がやったことではないから、顧客の身になって誠実に謝れたんだろう?」

わかってもらえて、安堵したせいか、瞳を潤ませてしまい頷くだけ。


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