その恋、取扱い注意!
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私の足は自宅でも湊のマンションでもなく、『美人堂』へ向かっていた。

狭い階段を重い足取りで上りきり、ドアを開けた。
ドアを開ける力さえ失われているようで、肩を使って中へ入る。

「いらっしゃいませ~ あらっ! ミミちゃんじゃない!」

入り口付近にいた明菜さんが、声をかけてくれる。

「美里ねぇさ~ん、ミミちゃんよ~」

カウンターの中にいた美里ママが顔を出す。ニヤッと笑う美里ママを見て、到底女性として見れなくなっていた。

あの笑い方は男性だよね。

「ミミちゃ~ん、いらっしゃいませ~ どうぞどうぞ」

私を席につかせた美里ママは隣に座り、おしぼりを渡してくれる。

「イケメンの彼氏は元気かしらぁ~?」

湊のことを言われ、美里ママの顔を見たら、涙腺がじわっと決壊して私の目から涙が溢れてきた。

「ミミちゃん? いったいどうしたのよ」

両手でぎゅっと握ったおしぼりを奪われ、頬を伝わる涙を拭かれる。




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