その恋、取扱い注意!
「美里ママ……」

「なんかあったのね? う~ん、ここじゃだめよね。こちらへいらっしゃい」

泣き続ける私を立たせると、バックヤードへ連れて行った。

隅にある二人掛けのソファに座らされ、美里ママも隣に腰かける。

バックヤードはいろいろな香水の香りが充満しているところだった。衣装やウィッグなんかも乱雑に置かれてあり、見てはいけないものを見てしまった気分になる。

「いったい何があったのよ~ 湊が女装していたのが許せないの?」

私の涙が止まらないものだから、美里ママは鉄砲玉のように聞いてくる。

「ち、違うんです……昨日……」

昨晩の話を、喉を詰まらせながら話した。





「結婚を延期しようって……理由は聞いていないのね?」

「っ……はい……理解できなくて、飛び出してきちゃったんです……」

「つらかったわね」

美里ママは私の肩を抱き寄せて、そっと抱きしめる。

一瞬驚いたけれど、今唯一の理解者である美里ママに抱きしめられて、湊とは違う心地よさを感じた。

< 337 / 437 >

この作品をシェア

pagetop