その恋、取扱い注意!
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「湊、話して。どうして延期したいのか」

「先に食べないか?」

湊が買ってくれたハンバーガーのセットは、ローテーブルに袋ごと置かれている。

「ううん。このままだと、喉を通らないから」

リビングのソファに隣同士に座った私たち。でもいつもの甘い雰囲気はない。
理由を知りたいけれど、湊の話を聞くのが怖いのも確か。

「俺は結婚を、急ぎ過ぎたみたいだ」

「え?」

「転勤の話が持ち上がってから、俺たちのことをよく考えたんだ。ここでなら結婚しても、お前はこれからも仕事を続けられるし、両親や友達に会いたい時には会える。でも、ロンドンへ行ったら、まず仕事は出来ないだろし、寂しくなっても両親には会えない。俺の仕事中はひとりきりだ。かなりのストレスになると思う。昨日、お前が頑張る姿を見て、縛ってはいけないと思ったんだ。実際、会うまでは一緒にロンドンへ付いてきてほしいと思っていた。だけど、お前のやりたいことを奪いたくないと思ったんだ」

「そんな……湊は勝手に考えすぎるよ!」

「ここに住むように言った時も、父親のためを思ってやめただろう? ちょくちょく会えるここでさえ、そうなんだから連れて行けるわけないと思ったんだ」

「……湊は私と2年も離れていていいの?」

湊が両親のことを考えてくれているのはわかった。美里ママの言うとおり、自分の気持ちより人を思いやる湊……ずっと身近にいたのに、気づかなかった私って本当にバカだ……。


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