その恋、取扱い注意!
「美加さんの結婚式に一度戻ってくるんだから、その時に行けばいいんじゃないか? 出発まであと5日しかない」

「……そうだね。出発日2日早まったけれど、急がされているの?」

「まあな。ほら、料理冷めるぞ?」

「あ、うん」

一口サイズに切り分けたハンバーグを口に入れた。

まだ2回しかこのお店に来ていないけれど、懐かしい味になるんだろうな。

これからの生活……湊をちゃんとサポート出来るか心配だけれど、ロンドンに住むのも楽しみでもある。

******

翌日、会社に出勤する最後の日。
普段と変わりなくカウンターに座り、仕事をしていると自動ドアが開いた。

「いらっしゃいま――」

クリーム色のツーピースを着た松下さんの姿を見て、言葉が途切れる。

松下さんは店内のパンフレットが置かれているコーナーに視線を送りつつも、まっすぐ私のいるカウンターにやってきた。

目の前に立った松下さんを見て、心臓がドキドキと波打ち嫌な汗をかきそうだ。

彼女とは暑気払い以来、会っていなかった。


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