その恋、取扱い注意!
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長い年月そばで過ごした俺たちに恋愛期間は必要ないと思っていた。
結婚の許可を両親にもらい、順調に進んでいた。

紅緒も卒業する。
客の相手をするより、ミミとの時間を大事にしたい。
敬一からもお役御免のお達しも出ていた。
そんなある日、敬一から紅緒の姿で店に来いと連絡を受けた。

俺の客が駄々をこねているのか?

まさか、敬一が想像つかないことを計画していたとは思いもよらなかった。


店へ通ずる狭い階段の中ほどまで来た時、なにやら騒がしい声が聞こえてきた。

いったいなんなんだ?

俺はロングドレスを乱暴にたくし上げ、駆け上った。ドアを開けて目に入ったのはミミがサラリーマンに抱きつかれているところだった。

俺は頭に血が上り、紅緒の姿であることを忘れ、サラリーマンを怒鳴り殴っていた。
当然、ミミに俺が紅緒だってことがバレた。
いや、これは敬一が仕組んだ計画だったのだと、少しして気づいた。

ミミに女装がバレた……俺はなんと言っていいのか、何とか精神を保ちつつも、しばらく放心状態だった。

それから俺はミミに紅緒になった経緯を話しはじめた。ミミは真剣に聞いてくれていた。
そこへ敬一から電話。弾んだ声から楽しんでいやがるなと、心の中で毒づく。


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