その恋、取扱い注意!
「もう会場に入らなきゃ。湊、探してくるね」

ふたりの母から離れ、湊を探しに高級感のある深緑のカーペットを歩く。

湊は大きな窓際に設置されたソファに座っていた。窓から滝が望める。

「湊」

「ミミ! さっき誰が通ったと思う?」

少し興奮気味に話しながら湊がソファから立ちあがる。

「誰って……お姉ちゃんたち?」

「そんなの当たり前だろ」

「わからないよ。いったい誰が通ったの?」

こんなに顔を高揚させている湊は珍しいと思いながら聞く。

「朝倉選手だよ」

「朝倉選手ってサッカーの?」

「ああ。めちゃくちゃカッコよかったぞ。お前ならぼーっと呆けるところだな。ここが家業のホテルだとは知っていたけど、帰国していたんだな」

子供のような湊に、思わず私の顔がゆるむ。

「良かったね」

「ああ。俺、朝倉選手にリスペクトしているから」

朝倉ホテルの次男、朝倉郁斗選手は現在スペインリーグで活躍中の選手。日本代表メンバーに選ばれているから、スペインと日本を行き来しているのだろう。

湊の興奮が伝わってきて、私もうれしい。

招待客が会場に入っていくのを見て、思い出す。

「湊、もう始まるみたい」

「ああ。行こう」

私たちは披露宴会場に入った。


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