その恋、取扱い注意!
「お前が男たちに狙われるからに決まってるだろ」

「は? 私が狙われるって?」

「俺の目を盗んで、お前にモーションかけているのを何度見たことか」

「あ……知ってたんだ」

たしかにパブに行くと、アルコールが入ってはしゃいでいる男性客が時々声をかけてくる。けれど、そんなのは社交辞令だと思って流していた。
それに私には一番大切な湊がいるし。他の男なんてありえないっ。

「あ、知ってたんだ……ってなぁ?」

湊は呆れた口調になって、イスから立ち上がった。

「湊っ」

「あ、時間だ。行ってくるよ」

ビジネスバッグを持って玄関に向かう後姿を追う。

「湊っ。妬いてくれる湊も大好きだからね」

ついていきながら、朝っぱらからちょっと照れくさいことを言うと、パリッと着こなしたスーツの肩がピクリと跳ねた。
振り返った湊は不敵な笑みを浮かべていた。

「サンキュ。朝からミミちゃん、積極的だな。会社行きたくなくなったんだけど?」

腰に腕が回って、グイッと引き寄せられ、身体がふわりと浮く。
出かける時の「行ってらっしゃい」のキスはいつもより深く唇が重なって、床に下ろされる。

「……行ってらっしゃい」

「行ってくる。授業中、寝ないでちゃんと勉強して来いよ」

うっ……たしかに寝不足だけど……それは湊のせいで……。

言葉に詰まった私の額に、もう一度唇を落として湊は会社へ出かけて行った。

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