その恋、取扱い注意!
「遠距離恋愛でもいいから、付き合ってくださいって言ったあの時の美海ちゃん、可愛かったな」

「昔の話はやめて下さい。私、もう帰らないと。コーヒーご馳走様でした」

腕時計を見ながら立ち上がる。

「美海ちゃん!」

引き留めようとする高野先輩に頭を下げてコーヒーショップを出ると、足早に自宅への道を急いだ。

高野先輩はいったい何を考えているのか。
あの笑みを見た時、背筋に寒気が走った。久我さんの言う通り、あんな性格では、婚約者のあの彼女が可哀想に思える。
会社の利益にならないけれど、ハネムーンは別の旅行会社で手配して欲しい。

******

眠ろうとベッドに横になったものの、眠気はやって来ない。何度も寝返りを打ち、とうとうベッドの上に置き上がる。

高野先輩に会ったせいなのか、湊に無性に会いたくなった。

枕元のスマホを手にしてから、シーツの上に放り投げる。

こんな時間に電話したらダメだよね……。

立ち上がり、窓に近づくとカーテンをほんの少しだけ開けて、隣の家の窓を見る。

この窓から見える向こうの窓は湊の部屋だった。
今もたまに泊まる時はあの部屋なんだけど、社会人になってからはほとんど泊まらずに帰ってしまう。
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