その恋、取扱い注意!
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「おはよう」

ダイニングキッチンに行くと、母がいた。

「美海、早くしないと遅刻するわよ?」

「うん……」

寝不足だ。悪い方にばかり考えてしまってなかなか寝付けなかった。

「熱でもあるの?」

洗い物の手を止めて、母が今にも近づいてきそうだ。

「ううん。熱なんてないよ。行ってきます!」

「コンビニで何か買って食べるのよ」

「はーい」

いつも食欲旺盛の私だけど、今朝は食欲がわかない。
心配をかけないように、適当に返事をして玄関を出た。

******

「ありがとうございました」

老夫婦を送り出して、席に着くと小さなため息が漏れる。

高野先輩が頭から離れない……。

接客中や、カウンターで事務処理をしている時も、自動ドアが開くたびに、ビクッとしてしまう。

「安西さん、お昼行かない?」

その声に顔を向けると、松下さんだった。
ペパーミントグリーンの女らしいスーツを着て華やかだ。

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