黒猫*友愛エトセトラ
「…あ。そう言えば、」
すぐにでも浅海から解放されたくて、ない頭をフル回転させ始めた俺は、あることを思い出した。
「“先に帰る”って伝えてくれって、言われてた。急ぎの用がある…とかなんとか?」
「……はっ?」
「あー、確か“先に行って待ってるから”とも言ってたような……」
「はあぁっ?」
……いや、俺が睨まれる筋合いなくない?
「たぶん、荷物持って家に帰ったんだと思うぞ?」
だから、お前もさっさと行けよ…そんな思いをこめて視線を送った。
俺は、早く部活に戻りたい。
「……あの男はっ」
怒りに満ちた表情で拳を握りしめていたかと思えば、
「知ってるんなら、最初から言いなさいよねっ」
理不尽な捨てゼリフを残して、浅海はものすごいスピードで走り出した。
「……速っ。」
その俊敏さに、思わず目を奪われちゃったけど……
「そこは普通“ありがとう”だろ?」
やっぱり嫌いだ。あの女。
アイツ……
歩の女の趣味は、俺には理解できない。