黒猫*友愛エトセトラ


「…あ。そう言えば、」


すぐにでも浅海から解放されたくて、ない頭をフル回転させ始めた俺は、あることを思い出した。


「“先に帰る”って伝えてくれって、言われてた。急ぎの用がある…とかなんとか?」

「……はっ?」

「あー、確か“先に行って待ってるから”とも言ってたような……」

「はあぁっ?」


……いや、俺が睨まれる筋合いなくない?


「たぶん、荷物持って家に帰ったんだと思うぞ?」


だから、お前もさっさと行けよ…そんな思いをこめて視線を送った。

俺は、早く部活に戻りたい。


「……あの男はっ」


怒りに満ちた表情で拳を握りしめていたかと思えば、


「知ってるんなら、最初から言いなさいよねっ」


理不尽な捨てゼリフを残して、浅海はものすごいスピードで走り出した。


「……速っ。」


その俊敏さに、思わず目を奪われちゃったけど……


「そこは普通“ありがとう”だろ?」


やっぱり嫌いだ。あの女。







アイツ……

歩の女の趣味は、俺には理解できない。


< 5 / 30 >

この作品をシェア

pagetop