君と僕の紙ヒコーキ
わたしは諦めて大人しく連れられることにして、先輩の少し後ろを歩いた。
「そう言えば名前は?」
「松坂、桜です。」
「そう松坂さんね。僕は滝川春斗。今日はよろしく。」
「こちらこそ…よろしくお願いします。」
すっと出されたてを慌てて握った。
ずっとずっと、入学したときから憧れていた先輩が、この人だった。
ただ、他の皆とは憧れの種類が違って、彼女になりたいとか、そばにいたいとかじゃなくて。
彼の写真を撮りたい、それだけだった。
私が人物を撮りたいと思ったのは彼が初めてだった。
今日の案内係の説明を先生に聞いている滝川先輩を、見ながらそんなことを思う。