あふれるほどの愛を君に
「ありがと。大切に使わせてもらうね。ホントありがとう………?」
サクラさんが黙っていることを不思議に思い、その視線を辿った。
彼女が見ている先には、ラグの上に座ってる僕の隣の小さな紙袋。
「あ、これは」
言いかけた僕の声は遮られた。
「楽しかった?」
「…え」
「友達と遊んできたんでしょ?」
甘夏の一つを取り出して、両掌で大事そうに抱いている。
「うん……楽しかったよ。そっちは? サクラさんも友達と会ったんでしょ?」
顔を上げると彼女は、すでに視線を移動させていた。
「まあまあかな」
「なんかあった?」
なんとなく、いつもより静かなサクラさんに訊ねた。すると彼女は、少しだけ歯切れが悪そうに答えた。
「うん、ちょっとね……この間話したでしょ? 友達が旦那さんのことで悩んでるって」
「浮気してる、とかいう話?」
「偶然今日見かけたのよ、その相手を」
そこで彼女は小さな顔を上げて、
「キャバクラの人? まさか旦那さんと一緒にいたんじゃ」
僕の目を真っ直ぐに見つめた。
「ううん、若い男の子とデートしてた」