あふれるほどの愛を君に
さっきからちょっと感じていた。なんだか今夜のサクラさんはいつもと違うって。
雰囲気とか纏った空気が、どことなく沈んでるようにも見えなくない。
「あ、そうだ。モモコさんからのメール読んだ?」
問いかけても表情は変わらない。
「お父さんのことでしょ。さっきウメちゃんと電話で話したわ」
「そっか」
やっぱり、いつもより元気がないみたいだ。
どうしたの?
疲れてる?
その思いを声に出して訊ねようとした時、
「ハル ――」
消えそうな小さな声で僕の名を口にしたサクラさんが、僕のところに降りてきた。
彼女の頭がコトンと背中にあたる。
「ねぇハル……あたし、そんなに強くないよ」
唐突に、静かにこぼれ落ちた言葉。
彼女が続けた。
「優しいハルが好きだけど、誰にでも優しくできるハルを尊敬するけど……でもその優しさで不安になることもあるの……。あたし、しっかりもしてないし、そんなに余裕もないよ」