あふれるほどの愛を君に
『どうしたの?』と口にはせずに、預けられた体温をそのまま背中で受けとめた。
ちょっと疲れがたまってるのかな……。
出張の後も残業続きだし、ゆっくりさせてあげる時間も持てなかった。
もっと気にかけてあげればよかったかな。
今日のことだってそうだよ。せっかくデートプランを考えてくれたのに、あんな断り方して。
嫉妬や不安ばかりに捕らわれて、最近の僕は自分のことばかりで、サクラさんを想ってるふりして全然そうじゃなかった。
黒木さんにヤキモチなんて焼いてる場合じゃないのに……ごめんね。
ゆっくりと彼女の方へ向き直り、今度は正面から受け止める。
彼女が言った言葉の意味を聞き返すこともせず、ただ黙って抱きしめた。
でも、本当にわかってないことはもっと別のとこにあったんだ。
サクラさん、情けないよね?
こんなんじゃ頼りないって思われるかな。
本当にそうだった。わかってなかったんだ。
この時、何に気づけずにどんな気持ちをわかってあげられないか ── 知ったかぶりなだけで、本当のことを知ることも僕はできずにいたんだ。