あふれるほどの愛を君に
やがて部屋の外が騒々しいことに気づき、他の人達と共に僕は部屋を飛び出した。
駆けつけてみると、商品企画課の部屋の前で数人が揉めていて、そこにいたのはさっきミーティングルームを出て行った先輩達と、それからサクラさんを含むBチームの面々。
輪の中心には、小柄な大島さんを庇うようにその肩を抱く黒木さんが、他の皆を見下ろすように立っていた。
「彼女がそっちの企画を盗んだって? 何を証拠にそんな話を」
あくまで冷静に対応する黒木さん。表情を曇らせている大島さんは俯いている。
「さっきミクちゃんが白状したんだ。そう指示されたって、うちの沢井をたぶらかして盗めって言われたって」
先輩の一人、井上さんが言い返すと黒木さんは笑い声をあげた。
「彼女が言った?」
「そうだよ!」
「誰に指示されたって?」
淡々とした口調で黒木さんが言い返し、井上さんが声を荒げた。
「それはそっちの誰かでしょうよ!」
「でしょうって、そんな憶測で言いがかりをつけられても困るなー」
「だから言いがかりじゃなくて、ミクちゃん本人が言ったんだって」
大島さんがギュッと両目を瞑ったのが見えた。