あふれるほどの愛を君に
それにしても、と桃子さんが語気を強め僕の顔をまた覗きこむ。
「なにケンカー? 原因はなによ?」
二重瞼の大きな瞳で問いつめられ、口を開きかけるけど……。
言葉に、できなかった。
それは、うまく説明できないとかそんなことじゃない。
星野と会った日、……星野と一緒にいるところをサクラさんと鉢合わせた日から一週間が経っていた。
あの後、僕達が顔を合わせるのは会社の中でのみで、その一番の理由はやっぱり忙しさのせいで、あとLINEのやり取りなんかは変わらずにしてるけど。
……でも――。
「………」
「あー、やっぱりいい!」
突然、桃子さんが大きな声で言った。
「あんた達も大人なんだから自分達でなんとかしな。悩んで、そして話し合え!ちゃんと会って。
だからあたしは聞かないよ! なにより、そんな魚が死んだみたいな目ぇしたハルオの身の上話なんか胎教に悪そうじゃないの? だから聞いてやーらない!」