あふれるほどの愛を君に

一気に捲し立てられ、ただ小さく、はい、とだけ返事をした。

きっと桃子さんは見透かしてる。
“聞かない!”なんて拒絶しなくても僕が話さないことを。


仕事が忙しいのは事実だ。
しかも、最後の仕上げの段階なのだから当然に。

それに編成チームは別々だから、社内で顔を合わせても雑談でも持ち出さない限り会話も自然と減る。

でも、LINEは毎晩してる。


“ただいま”
“おかえり”

“早かったね”
“直帰したんだ”

“疲れた”
“お疲れさま”

“何してた?”
“テレビ見てた”

“おもしろい?”
“あんまり”

“もう寝る?”
“うん”

“おやすみ”
“おやすみなさい”


一応してるけど。
たまに笑い話みたいなものも伝えあったりするけど……。


でもあの日のことは、サクラさんも聞いてこないし僕も口に出さない。

それがとっても、おかしいんだ。

なんだか、在処を知ってる地雷を撤去もせず、自爆もさせず、そんな感じ。

なんだろう……掘り起こすのを怖がっているのか?

それとも、どちらかが踏むのも待っているのかな。

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